◆「まさかだまされるとは…」ニセ医師採用したNPO ◆
 「まさかだまされるとは」――。東京都板橋区の高島平中央総合病院でニセ医師が区民健康診断をしていた事件で、詐欺や医師法違反(医師の名称使用制限)などの疑いで逮捕された東京都世田谷区中町、無職黒木雅(みやび)容疑者(43)を雇用していた長野市のNPO法人「メディカルチェック」が27日記者会見し、偽造の医師免許証を提示されて採用した経緯などを明らかにした。
 黒木容疑者が健康診断をした企業側には診察のやり直しを伝えるという。
 同法人の高見沢雅之理事(54)は「多大なご迷惑とご心配をおかけした」との謝罪文を報道陣に配布。本人確認が不十分だったことを認め、「仲介料を節約するため、直接仕事のやり取りをしてしまった。派遣会社を通せば、こんなことにはならなかった」と困惑の表情を見せた。
 高見沢理事によると、同法人は黒木容疑者に対し、昨年4月から今年8月にかけて72回、計69社の延べ4897人の健康診断を行った報酬として、519万円を支払った。黒木容疑者は架空とみられる出版社の口座を報酬の振込先に指定したという。同法人はこれ以外に、都内からの交通費や健診前日に県内に泊まるホテル代も支払っていた。
 黒木容疑者から「名古屋市の派遣会社の募集要項を見た」と同法人に電話があったのは昨年2月頃。同3月上旬、理事長らが都内で面接した。黒木容疑者は、「黒木良太」名義で、日付と当時の省名や大臣名が食い違う偽造の医師免許証のコピーと「山梨医科大医学部卒」と学歴を偽った履歴書を提出した。身元確認のための運転免許証は持参せず、「自宅に置いてある」と説明したという。
 同法人が県外から採用したのは初めてだったが、黒木容疑者は受診者から評判が良かったため、その後は派遣会社を介さず、大人数の健診は本人に直接依頼した。高見沢理事は「面接では、話がうまく、乗せられてしまった。気さくで人当たりが良く、完全に良い先生にしか見えなかった」と振り返った。今月10日にも健診を依頼していたが、「今まで嘘(うそ)をついてすみませんでした。これから警察に行ってきます。本当に申し訳ありませんでした」と同法人にメールがあったという。

 長野市保健所は27日、同法人事務所の立ち入り検査を行い、黒木容疑者の採用の経緯や支払った報酬額などの説明を受けた。同保健所は採用の際には、履歴書の学歴の裏付けを取るなど確認の徹底を指導した。

読売新聞 2012年9月28日‎
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